【東京/大人の絵画教室】油彩
前回のブログは『最も単純で要領の良い形の袋に入れる』という形の捉え方について簡単に説明していきました。
今回は、形の捉え方の続きではなく、同じモチーフでの油彩を紹介します。
10/25のブログの予告内容でもあります。
https://tokyo-kaiga.com/blog/20221025-1557/
油彩は自由制作コース内で指導しています。
平賀美術倶楽部のHPには明記していませんが、通われている生徒さんの「水彩も油彩も両方学びたい」などのニーズに応えて、期間限定で月一回の油彩だけのクラスを作りました。
基本から様々な表現方法まで、充実した内容です。
その表現方法の中の一つ、『スカンブリング技法』を簡単に紹介します。
↑キャンバスのサイズはF3(220×273㎜)です。
まずは『グリザイユ技法』を用い、ブラウンで明暗を作ります。
溶き油はテレピン(ターペンタイン)を使用します。
『グリザイユ(Grisaille)』はフランス語の『グリ(gris)』から派生した言葉で、「グレー」を意味することから無彩色の陰影の調子だけで仕上げた絵の総称です。
表現によっては例外もありますが、透明水彩でもアクリルでも、薄塗りの場合はグリザイユが最も重要になります。
↑ここで『スカンブリング技法』が登場します。
粘性が必要のため、溶き油は使用しません。
『スカンブリング技法』とは、乾燥させた下層に不透明色の絵具を薄塗りする擦りぼかし技法です。
油彩画の技法から始まりましたが、アクリル画にも使用できます。
スカンブリング作品の特徴は以下です↓
・下層と上層が混色されているような効果
・タッチの明瞭→曖昧=緊張→弛緩による穏和
寒色を使用しても、ブランケットのような温かみが生まれます
描き方は、硬めの筆に絵の具を少量なじませて、下層の色を少し透かして見えるように画面を擦ります。
凹凸のあるキャンバスが描きやすいです。
凸に固有色(そのものが持つ色)が乗っている状態で、凹には下層のブラウンが残ります。
下層の色を上手く残せない場合は、絵の具を含ませた筆を布で拭うと成功します。
背景は参考作品では青くしました。
カラフルな果物に使われていない色が青なので、より画面が賑やかになります。
また、青などの寒色は後退色でもあります。
トップ画像の写真のようにグレー調でもよいです。
白と黒の混色グレーは深みが出ないので、補色(反対色)の
・イエロー+ヴァイオレット
・レッド+グリーン
・オレンジ+ブルー
などの混色でグレーを作ります。
本作は青+白+ごく少量の茶色の混色で描きましたが、他の例も見せたかったので、教室の実演ではオレンジとブルーの組み合わせを選びました。
暖かい印象の絵にしたい場合はオレンジ寄りのグレー、迷ったらブルー寄りにして背景を後退させます。
中間の無性格なグレーでもよいです。
下層のブラウンを潰しすぎた場合は、乾燥を待って再度ブラウンを描き入れます。
少しの修正であれば、ブラウンもスカンブリング技法を使用します。
↑光を入れて完成です。
リンゴが特に分かりやすいでしょうか。グリザイユの明暗やタッチが最後まで影響しています。
薄く固有色を重ねるだけでリンゴになります。
この技法でグリザイユが最も重要だと伝えたのが分かります。
完成画はあくまで一例です。
古典的に背景を暗くし、果物とのコントラストを強くして物を浮き上がらせてもよいです。
1/30、31のブログで書いた「カンディンスキーが言うように、黒の作用でそれぞれの固有色が明確に響き合っています」に近い効果があります。
またそれとは逆に、全ての色に絵の具の白が関わり、半分夢の中にいるような明るいパステル調にしてもおしゃれですね☺️
トリミング(構図)は前回のデッサン課題とは違います。
例外もありますが、基本的に油彩などの重厚感のある画材は、モチーフ(描く対象)を大きく入れる方が有効です↓
↑トップ画像よりも広く切り取った構図です。
トップ画像の構図も含め、トリミング例を3種類用意しました。この3枚のうち、好みの構図を選んで描きます。
絵は“同じ”を嫌います。このトリミングは2つ並んだリンゴとレモンの同じ色や形、大きさをどう絵作りするかが課題です。
↑大胆にモチーフを大きく切り取った構図です。
私はこの構図が好きです。
画面の中にモチーフをぎゅうぎゅう詰めにするほど、F3サイズの小品にしても力強い絵になります。
まだ授業では途中ですが、皆さん順調です。
擦るコツはすぐに掴めます。
「スカンブリング技法は誰でも成功する」ということが証明できそうなので、今から生徒さんの完成作品が楽しみです☺️
平賀太朗
〔東京の絵画教室/平賀美術倶楽部:水彩画、油彩画、アクリル画、パステル画、デッサン、その他様々な特殊技法が学べます。入会金無し。初日から手ぶらでOK。初心者のかたから経験者のかたまでお気軽にお問い合わせください。〕
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