【油彩のコツ】温かみを生む「スカンブリング技法」――グリザイユから始める油彩表現

query_builder 2023/02/03
ブログ
フルーツ

皆様、こんにちは。「平賀美術倶楽部」の平賀です。

当教室の自由制作コースでは、油彩の技法や表現方法を12種類以上ご用意しており、モチーフの数だけ無限の表現が生まれます。
本日はその中でも、「誰でも簡単に成功できて、作品に温かみが生まれる」と人気の『スカンブリング技法』を、フルーツの作品(F3サイズ:220×273mm)を例にご紹介します!



1. 下塗り:土台を作る「グリザイユ技法」

キャンバスに下書きをしたら、まずはブラウン(溶き油はテレピンのみ)の単色で画面全体の明暗(トーン)を作り上げます。

グリザイユ

「グリザイユ(Grisaille)」とは、無彩色や単色の陰影だけで仕上げる伝統的な古典技法です。油彩はもちろん、透明水彩やアクリルでも薄塗り仕上げを行う場合には、このグリザイユによる明暗の土台作りが最も重要な鍵となります。



2. 本画:温かみを生む「スカンブリング技法」

グリザイユの下塗りがしっかり乾燥したら、いよいよ「スカンブリング技法」の登場です!

油彩修正

💡「スカンブリング技法」とは?
乾燥した下層の上に、絵の具を少量つけた筆で擦るように薄く塗っていく「擦りぼかし技法」です。粘性が必要な為、溶き油は使用しません。


◎表現の特徴:

* 下層の色(ブラウン)と上層の色が絶妙に透けて混ざり合う


* タッチの明瞭<曖昧(緊張<弛緩)により緩和が生まれ、画面全体にブランケットのような優しい温かみが漂う    



◎擦り方のコツ:



硬めの筆に絵の具をごく少量なじませ、キャンバスの凹凸(目)の「凸」部分にだけ固有色を載せるイメージで優しく擦ります。下層のブラウンが残り「凹」にチラリと覗くのが成功の秘訣です。絵の具が付きすぎた場合は、筆を布で軽く拭うとうまくいきますよ!

    




3. 背景の色彩理論:補色で作る深みのあるグレー

背景には、果物のカラフルな色群を引き立てる「青系(寒色)」を採用しました。青は後退色でもあるため、手前のフルーツがグッと前に浮き出て見えます。
もし写真のようなグレー調の背景にしたい場合、白と黒を混ぜただけのグレーを使うと画面の深みが損なわれてしまいます。そんな時は、補色(反対色)どうしを混色してグレーを作るのがプロの技術です!

・イエロー + ヴァイオレット



・レッド + グリーン



・オレンジ + ブルー



温かい印象にしたいならオレンジ寄り、奥へ引っ込ませたいならブルー寄りのグレーに調整します。本作の実演では、オレンジ+ブルーの組み合わせで深みのあるグレーを表現しました。



4. 完成!グリザイユが響き合う重厚な一作

光を描き入れて、完成です!

果物油彩

特にリンゴの表現をご覧いただくと分かりやすいかと思いますが、最初に描いたグリザイユの明暗や筆タッチが、上に塗った固有色の下からしっかりと効果を発揮しています。薄く色を重ねるだけで一瞬で瑞々しいリンゴに見えるのは、土台のグリザイユが完璧だからこそです。

今回は背景を明るい青に仕上げましたが、古典画のように黒っぽい暗い背景にして果物をくっきりと浮かび上がらせるのも素敵です。

以前のブログでご紹介したカンディンスキーの言葉どおり、「暗い色の作用によって、それぞれの固有色が鮮やかに響き合う」効果が得られます。
逆に、全体に白を混ぜた明るいパステル調で仕上げれば、夢の中にいるようなおしゃれな雰囲気に仕上がりますよ☺️↓

2023/01/30の記事
https://tokyo-kaiga.com/blog/20230130-1993/

2023/01/31の記事
https://tokyo-kaiga.com/blog/20230131-2000/



5. 好みの構図(トリミング)を選ぶ

トリミング(構図)は前回のデッサン課題とは違います。
トップ画像の構図も含め、教室では生徒様に選んでいただけるようにトリミング例を3種類用意しました。この3枚のうち、好みの構図を選んで描きます。
参考作品は、果物全体のバランスが良く取れた王道の配置を選びました。

果物の描き方

・ゆったりした 広めの構図: 余白を生かした空間表現。同じ色・形(リンゴとレモンなど)が2つ並ぶため、どう変化をつけて、形や大きさ、配色などを絵づくりするかがポイントです。


絵の構図

・迫力のある 寄りの構図: 私が個人的にとても好きな構図です!小品(F3サイズ)でも画面いっぱいにモチーフを詰め込むことで、非常に力強い作品に仕上がります。



おわりに

「絵の具を優しく擦る」というスカンブリングのコツは、一度感覚を掴んでしまえばどなたでも簡単に成功します!当教室の生徒さんたちも、皆さん素晴らしい仕上がりを見せてくださっています。
油彩ならではの奥深い魅力と温かい発色を、ぜひ教室で体験してみてくださいね!

平賀美術倶楽部  平賀太朗

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