【生徒作品紹介】緻密さと透明感の融合、Iさんが描く「水辺の光のリズム」
今回も、「平賀美術倶楽部」の生徒さんの素晴らしい作品をご紹介します。
ご紹介するのは、古巣の絵画倶楽部時代から長年応援してくださっている、Iさんの作品です。
F6号(410×318mm)の水彩紙に描かれた、秋の気配漂う水辺の風景。
そこには、Iさんにしか描けない「重厚な透明感」の世界が広がっています。
“微に入り細を穿つ” 圧倒的な観察眼
Iさんの特技は、なんといっても“微に入り細を穿つ”ような緻密な表現です。
細かい情報の多いモチーフを好み、これまでは細部まで克明に描き込める「アクリルガッシュ(不透明アクリル絵具)」の特性を最大限に活かして、まるで高性能スキャナーのように正確で情報量の多い絵画を制作されてきました。
そんなIさんが、当教室の開業を機に改めて挑戦を始めたのが「透明水彩」の復習受講でした。
透明水彩と不透明水彩、その決定的な違い
ここで少し、画材の豆知識を。
透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)の最大の違いは、顔料(色の粉)とバインダー(固着剤)の比率にあります。
特徴
◎透明水彩
・透明度 ⇨ 高い(下地が透ける)
・顔料の量 ⇨ 比較的少ない
・重ね塗り ⇨ 下の色と響き合う
・明るい表現 ⇨ 紙の白さを活かす
◎不透明水彩(ガッシュ)
・透明度 ⇨ 低い(下地を隠す)
・顔料の量 ⇨ 非常に多い
・重ね塗り ⇨ 下の色を覆い隠す
・明るい表現 ⇨ 白い絵の具を塗る
不透明水彩は隠蔽力が強く、上から色を重ねることで修正やハイライトが容易です。対して透明水彩は、絵の具の伸びが良く、みずみずしい滲みを楽しめる反面、一度置いた色は下の層に影響を与え続ける、繊細な画材です。
「軽さ」を「重厚さ」へ変える逆転の発想
一般的に透明水彩は、その「軽やかさ」が特徴とされますが、Iさんのアプローチは一味違います。不透明アクリル絵具で培った緻密な描写力を、あえて透明水彩でも貫き、徹底的な「描き込み」を続けられました。
不透明絵具に頼らず、下の色が透けて見える透明画材を幾重にも重ねる。
それによって生まれたのは、通常の透明水彩ではなかなかお目にかかれない、油彩画のような深く重厚な輝きです。水面の波紋一つひとつに宿る光の粒子は、まさに執念とも言える観察の賜物です。
描くことは「癒し」であり「修行」
これほどまでに微細な描写を続けるのは、並大抵の根気ではありません。
教室で筆を運ぶIさんの姿は、雑念を払ってひたすら文字を綴る修行僧のようでもあり、あるいはその一筆一筆が、日常を離れた「無心」の癒しになっているようにも見えます。
圧倒的な集中力から生まれる、宝物のような風景画。
長年、彼女の進化を見守ってこれたことは、講師としての私の誇りでもあります。
平賀美術倶楽部 平賀太朗
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