【東京/大人の絵画教室】色の相性Ⅲ
昨日のブログで、「色には、“相性の良い色どうしの組み合わせ”がある」ということをお伝えしました。
2色を隣接させた時を条件に、相性の良い組み合わせは2種類、【同系色】と【補色】です。
今回はフォービズムという活動で描かれた名画を元に、色について解説していきます。
フォービズムの説明は以下です↓
フォーヴィスム(野獣派)1899~1907
フォーヴ(fauverie)とはフランス語で「野獣」という意味を持ちます
。
目に写る色彩ではなく心が感じる色彩表現、固有色のある写実ではなく感覚を重視し、鮮烈かつ自由度の高い純粋な色面をリズミカルな構図の中に響かせる作品群は、彼らのグループ展会場において、批評家から「檻の中にいる野獣(フォーヴ)の様だ」と評されたことから、フォービスムと呼ばれるようになりました。
ジョルジュ・ブラック『アントワープの港』1906/油彩/38×46㎝
講師としてではなく、画家としては、「考えてはいけない!感じるのだ!」と言いたい絵ですが、やはり考えられた配色になっています。
空がピンク(白を混ぜた赤)
海がパステルミント(白を混ぜた緑)
これらが補色の関係です。
※輝同系色や補色は、互いに同じ無性格な色(ホワイト、グレー、ブラック)で混色されていれば、良い相性は変わりません。
船の喫水線の赤に対しては、やはり写り込みに緑を隣接させていますね。
ジョルジュ・ブラック『レスタック近郊の風景』1906/油彩/50×61㎝
レスタック(フランス、マルセイユ)を愛するセザンヌの影響を受けたブラックも、レスタックを何度も訪れては描いていました。
美しいオレンジとブルーの響きあいの中、人物を入れる物語性と左下のグリーンとレッドの補色のアクセントが、画家の観るものへのサービス愛を匂わしています。
アンリ・マチス『昼寝』1905/油彩/60×73㎝
画面の大半を占めるグリーンの次に多く用いている色が捕食のレッドです。
画面右上の壁面にあるグリーンから反時計回りに、ブルー、ヴァイオレット、ピンク系へと移行しグリーンに戻る輝同系色と補色。
このリズムはあらゆる箇所に配慮されています。
ヴァカンスでしょうか、横たわる女性とバルコニーに立つ少女の快い静と動の周囲に、大きなタッチと小さな密のタッチの描きわけが巧妙です。
二つの対抗する要素を同じ性格にしない工夫です。
モーリス・ド・ヴラマンク『シャトウの庭』1903/油彩/81.3×100.7㎝
ゴッホ展を観て「父親より私はゴッホを愛す」と叫んだ彼の絵が表すとおり、生命感溢れるタッチと色使いが前面に押し出されています。
濃紺の輪郭で囲われた色面は、青を基調とした寒色とお付き合いをするように、寒い赤紫が支えています。
夕暮れでしょうか、太陽が、観る者の背後の遥か後方に感じる立体作品のようです。
アンドレ・ドラン『ロンドンブリッジ』1906/油彩/66×99㎝
影となる青を拠点に見てみましょう。
全ての青と隣接する色は、オレンジ系の補色とグリーン系の輝同系色に徹しています。
テムズ川に「水=青」といった概念はなく、心が弾き出した答えがグリーンです
アンドレ・ドラン『ロンドンの船着場』1906/油彩/66×99㎝
ここまで潔く赤を使える画家はそう多くはいないと思います。
レッドを引き立てるための補色のグリーンはあくまでも控えめで淡いです。
心地よい赤のリズムはどこか攻撃的で、ライバルへの挑発とも感じられる作品です。
フォーヴィスム的な作風に、オリジナルで挑戦する生徒さんが現れることを期待しますが、プロのように“心が感じる色”を見つけることは難度が高いです。
要領としては、まず風景全体を寒色暖色どちらで支配したいかを決定させます。
もしくは影と光を分けて、どちらかの支配色を決めてから輝同系色、補色を意識しながら、2番目に多い色、3番目に多い色、4、5…と続けましょう。
納得のいくまで何度でも再構築をして、色彩が本来持っている表現力をジグソーパズルのように楽しんで欲しいと思います。
ちなみに、どうしても相性の良くない色を置くしかない状況の場合は、無理せずにその2色の間に無性格な色(ホワイト、グレー、ブラック)の色を挟めば解決します。
フランスの国旗、トリコロールなどが美しく見える理由は、無性格な色が赤色と青色の関係性をリセットしてくれているからです。
名画にもこの方法を採用しているのではないかと思います。
次回は講師作品で色について説明します🌈
平賀太朗
〔東京の絵画教室/平賀美術倶楽部:水彩画、油彩画、アクリル画、パステル画、デッサン、その他様々な特殊技法が学べます。入会金無し。初日から手ぶらでOK。初心者のかたから経験者のかたまでお気軽にお問い合わせください。
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