【教室紹介】「絵を描く人を描く」――菖蒲園で始まる、絵作りの物語
皆様、こんにちは。「平賀美術倶楽部」のホームページへようこそ。 当倶楽部では、絵画制作の楽しさと技術を深めるための様々なレッスンを行っております。日々の教室の様子や生徒様の作品を随時ご紹介していきますので、ぜひチェックしてください。絵画にご興味をお持ちの方は、いつでもお気軽にご相談くださいね。
今回は、開講初期に行った思い出深い課題作品をご紹介します。
「全員参加」の熱量に包まれて
トップ画像の作品は、イギリスの高級水彩紙「ラングトン」に描かれた、透明水彩の4号サイズです。
ある日、独学で描かれていた生徒さんから「もっと技法を深く学びたい」とご入会をいただき、その方が自宅近くの菖蒲園で撮影された写真を元に、授業課題を組みました。 「この素晴らしい風景を、皆で共有しよう」と参考作品をお見せした瞬間、生徒さんの目がキラリと輝き出したのです。その熱量に圧倒されるような形で、結果的にクラス全員がこの課題に取り組むこととなりました。
生徒さんの目の眩しさにありがたみを感じながら、熱量に日焼けしそうな早い真夏を迎えました。
“写真”を“絵”へと昇華させる「絵作り」
モチーフは、ベンチに座って菖蒲をスケッチする海外の女性。 「絵を描いている人を描く」という少し珍しい構図ですが、花に優しく語りかける女性の無垢な姿と、それに応えるような菖蒲、そして陽だまりの中で安らぐ愛犬。この写真が放つ物語を、どうやって一枚の「絵」として再構築するか。
大切なのは、写真の情報をただ写し取る「写真を描く」のではなく、意図を持って絵作りをする「絵を描く」ことです。
○絵作りの3つのポイント
1. 色のリズム : 視線の誘導を計算した「大・中・小」の構成と、心地よい「粗密」の配置。
2. 強調と省略 : 何を描き、何を削るかという選択の美学。
3. 余白 : 画面に無限の広がりを与える空間の設計。
上記、絵作りの解説をします。
1.
主役の女性の白い洋服を「大」とし、この無垢を拠点に帽子付近にある密集した菖蒲の白を「中」、そこから各図形の「小」へと流れを用意します。そして、花が持つ固有色の白に「粗密」を作ります。
白だけでなく、菖蒲のもつ固有色の紫系や、草などの緑の中にも「大・中・小、粗密」があります。
2.
初心者の頃は、つい見えるものを全て描いてしまいがちです。しかし、それではテーマがぼやけてしまいます。 表現に迷ったときは、ぜひ「まずどこを省略するか」を考えてみてください。主役を強く押し出そうと力むよりも、余計なものを削ぎ落とすことで、主役は自然と輝き出します。「描かない」という勇気も必要です。
3.
省略による効果はそれだけではありません。
外周に残した余白に向かって徐々に消えゆくような表現は、余白のない隅々まで描き込む表現よりもさらに無限の広がりを感じさせます。菖蒲園という広い空間を伝えるには、描き込みすぎない余白の美が非常に効果的なのです。
物語を創る楽しさ
ちなみに絵に登場しているワンちゃん、 実は元の写真ではワンちゃんの場所には黒いバッグが置かれていました。「構えて絵を描くのではなく、散歩を楽しみながらのスケッチ」という風景を創り出そうと、思い切って私の愛犬を登場させてみたのです(笑)。
このように、現実のモチーフをベースにしつつ、自分の中にある物語を加えていくのも「絵作り」の醍醐味です。
生徒さんのおかげで今回も絵作りを楽しめました。 これからも、皆さんと一緒に豊かで楽しい絵画の世界を育んでいければ幸いです。
平賀美術倶楽部 平賀太朗
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